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大翔は深呼吸をした後私に言った。
「凄く嬉しいけど、今日は無理。あの日だから。」
少し恥じらうように言った。
…あの日?生理?…
私は思わず吹き出した。
「あの日ってどの日よ~!」
さっきまで泣いていた私、今は大声で笑っている。
「笑顔が見れてよかった。ごめんな。でも、希望の姉ちゃんだから、ほっとけなかったんだ。」
大翔の優しさに私は嬉しさを感じる反面、姉の気持ちを知りながら、姉に意地悪をした自分を恥じていた。
私は大翔に打ち明けようと口を開いた。
「姉、手術するの。」
大翔は目を丸くした。
「癌なの。」
更に目を丸くする大翔。
「姉はそれを知らなくて、母と私の話を聞いて、それで飛び出したの。」
「そうだったのか…」
大翔は真子の涙の理由がやっとわかった。
「私最低なんだ。」
私は呟いた。
「なんで?希望は何も悪くないだろ!」
大翔は真っ直ぐに私を見た。
私は大翔を失うかもしれない…そう思いながらも、黙っていられなかった。
「お姉ちゃんね、大翔が好きなの。」
「はっ?」
大翔は驚いていた。
「私、それを知っていながら、わざと大翔の惚気話しをしたり、キスマークを見せたりした。お姉ちゃんに大翔を取られるんじゃないかって、不安で不安でたまらなくて…でも、虚しくて、自分が大嫌いだった。」
「だからか…今日の希望、いつもなら恥ずかしがるのに、積極的だったから。」
「ごめんなさい!私、大翔の気持ちを利用したんだよね…」
しばらく大翔は黙り込んでいた。
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