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「私が羨ましい?」
姉の言葉に耳を疑った。
「お父さんと喧嘩する希望、お母さんにわがままを言って甘える希望。羨ましかった…私もお父さんと喧嘩したり、お母さんにわがまま言ったりしたかった。」
まるで意味がわからない私。
「喧嘩すればいいじゃん、わがまま言えばいいじゃん。お姉ちゃんいい子過ぎるよ!それに、今からでも遅くないし!」
私は必死になって姉に訴えた。
姉は私に抱き着いた。
「フワフワな髪の毛。昔はね、いつもこうやって希望を抱きしめていたの。覚えてない?」
私にその記憶はなかった。
私の記憶には、姉に対する劣等感しかなかったからだ。
「お姉ちゃんと大翔が公園で抱き合っていたのを見てね、やっぱり大翔もお姉ちゃんを好きになるって思ったの。」
姉は顔を赤くして私に頭を下げた。
「見ていたんだ。ごめんね…」
私は言った。
「もういいの。私こそ、意地悪ばかりしてごめんなさい。」
私達は顔を見合わせて笑った。
「やっぱり大翔君は素敵よね!」
姉はとてもいい笑顔で言った。
「私、死ぬかもしれないと思って、一度でいいから私を見て欲しくて抱き着いたの。希望の電話の後、私告白したのよ。」
初耳だった。
大翔は何も言ってなかったから…
「大翔君ね、私に言ったの。」
『有難う。でも俺希望の笑顔が大好きなんです。早く仲直りして下さい。希望泣きながら探してましたよ。それから、真子さんも、笑顔素敵ですよ。』
「 そう言って笑ったの。
失恋しちゃったけど、彼を好きになってよかったと思えた。ただ、希望を裏切ってしまった事に、罪悪感を感じて、それに…この先好きな人が出来ても、子宮がない私は…子供産めない訳だし。」
姉が小さく小さく見えた。
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