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若い姉の癌の進行は予想以上にはやい。
だが、奇跡が起こる。
抗がん剤や放射線治療が効果を見せたのだ。
一進一退を繰り返しながら、姉は生きる事を諦める事はなかった。
8月に余命半年と宣告された姉は、その年暮れに退院が決まった。
関東大会では惨敗した私達は、来年に向け、練習に明け暮れていた。
くたくたになって帰途に着いた私達。
「希望、クリスマスさ、デートしないか?」
大翔が突然言った。
姉が退院してくるのは大晦日。
イヴなら時間はある。
「いいよ。久しぶりだよね。」
二人でデートするのは本当に久しぶりだった。
私は母に報告した。
「希望、楽しんで来なさい。」
母は快く承諾してくれた。
お風呂から出た私に母が封筒を渡した。
その封筒には三万円入っていた。
「いっいいよ…入院にお金かかるのに!」
私は慌てて返そうとした。
母は受け取らなかった。
「そのお金で、可愛い服を買って、大翔君に何かプレゼントを用意して、真子の分まで楽しんで来なさい。門限は特別に1時間のばしてあげるから。」
私は母に抱き着いた。
「大好きお母さん!」
母は私を抱きしめてくれた。
久々の温もりだった。
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