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「お姉ちゃん。」
私の口に言葉が戻った。
「あっ!そっか~若槻の妹か~」
伊原先輩の声が響いた。
「なっなんで伊原先輩が家に?」
私は全く訳がわからなかった。
「急に雨が降ってきたから、傘を貸そうと思って寄ってもらったのよ。」
姉が少し早口で言った。
私はまだ理解出来ないでいた。
「お姉ちゃんなんで伊原先輩と知り合いなの?学年も部活も違うのに?」
その質問に顔を赤らめる姉。
先輩は頭を掻きながら俯いた。
その瞬間、私の幼い頭の中で、一つの答えが出た。
「付き合ってるとか……?」
「まだ誰にも言ってないの…内緒にしてね。」
白い肌をピンク色に染めながら懇願する姉は、羨ましいくらいきれいだった。
「そうなんだ。わかった!」
私は二人の顔を見ることなく、その場を逃げるように立ち去った。
部屋に入るなり、涙が溢れ出した。
『初恋だったのに!お姉ちゃんなんか大嫌い!嫌い嫌い嫌い!』
心の中で叫んでいた。
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