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旅行当日。
大翔の母親が見送りに来てくれた。
大翔の姉の口添えもあり、快く承諾してくれたのだ。
両親は何度も頭を下げていた。
そんな様子を姉はどんな気持ちで見ていたのだろう…
姉も、自分の死期を悟っていたのだろう。
なぜ大翔がいるのかを聞いてくる事はなかった。
「さて、出発しよう!」
父の声に、
『出発!』
私と大翔は声を揃えて行った。
「辛くないか?」
数分おきに父が姉に聞く。
「お父さんしつこいよ~」
姉が笑いながら言う。
車内は明るい笑いに包まれた。
姉は流れる景色を楽しんでいた。
少し多めに休憩をとりながら目的地にむかった。
「あっ!」
突然姉が声をあげた。
「なにっ?」
少し、うとうとしていた私はびっくりした。
「海が見えた~」
目を輝かせ遠くを見つめる。
「トンネル抜けたらもっと見えるよ。」
父は嬉しそうに姉に言った。
長いトンネルを抜けた瞬間、青い海が姿を現した。
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