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結局海に決まった旅行当日。
後部座席に姉と座る。
「希望、チョコ食べる?」
私にさしだす。
「いらない!」
私は窓の外を見ながら答えた。
「そう。」
姉の悲しそうな声が耳に残る。
「お父さんが貰おうかな!」
つかさず父がフォローする。
…ほらまた…
私は父の後ろ姿を睨んだ。
私はわざとにこやかに姉に話しかけた。
「お姉ちゃん!」
姉は嬉しそうに微笑んだ。
「お土産彼氏に買って行くの?」
私の言葉に姉の顔が強張った。
「何~?彼氏だと~?」
ハンドルを握った父が後ろを振り向く。
「あなた!前見て!」
母が慌てる。
「希望…内緒って言ったのに…」
俯き小さな声でつぶやく姉は泣きそうな顔をしていた。
私はたまらなく嬉しかった。
「あ~ごめんなさ~い。うっかり言っちゃって!」
車の中は重い空気に包まれた。
「真子だってもう彼氏居てもいい年頃よね。今度連れていらっしゃいね。」
母がフォローする。私はそれが面白くなかった。
「お母さん達が居ない時に来てたよね~」
爆弾発言に父は車を停車した。
「真子!本当か?」
父がこんなに動揺するのをはじめて見た。
姉は白い肌を真っ赤にしながら涙目になる。
「お父さん。そんなむきにならなくても!」
母がなだめる。
「かっ傘を貸してあげただけ。」
絞り出すように姉は言った。
父は安堵の表情を浮かべた。
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