嫉妬

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姉の担当医師が病室を訪ねて来た。 「若槻さん、ちょっとよろしいですか?」 にこやかに微笑みながら言った。 「ちょっと行ってくるわね。」 母は大翔に、 「ゆっくりしていってね。」 そう言った。 私達はたわいもない話をしていた。 「ところでお姉ちゃん、まだ退院出来ないの?」 私はただの風邪にしては、長引く入院に疑問を感じていた。 「なんか、よくわからないのよ。ただ、私はもう元気なんだよ。食欲もあるしね!」 確かに顔色もいい。 「風邪を馬鹿にしたら駄目なんですよ。きっと大事をとってるんですよ!」 大翔は私の頭を軽く叩いた。 「でも、皆に迷惑かけて…ごめんね、家事大変よね?」 気を使う姉。 「そうでもないよ。」 私は姉を気遣いわざとあっけらかんと言った。 「そう?」 姉は私を見る。 「大丈夫よ!」 そんな私を見て姉が笑った。 「希望は嘘が下手ね。嘘をついてる時は、必ず耳を触るんだから。」 私は思わず耳から手をはなした。 「いい事聞いちゃった。」 大翔は嬉しそうに笑った。 母が戻って来た。 「真子、明後日退院してもいいって!」 満面の笑顔の母。 それなのに、哀しそうに見えたのは気のせい? そんな疑問を抱きながら私達は病室を後にした。
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