408人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
「俺を見ろ。」
なんかムッとした私は大翔を睨んだが…大翔があまりにも優しく微笑んでいて、ポロポロと泣いてしまった。
「希望、俺はお前だけしか見てないよ。」
さっきの光景が頭を過ぎる。そう、手を回していたのは姉だけだった。
「大翔、説明して…」
私は涙を拭いて大翔を見つめた。
転びそうになった姉を抱き留めただけだと短く答える大翔。
大翔の背中に回された姉の手の真相は聞けなかった。
「大翔が追い掛けて来てくれなかったら…私、ヒック、ヒック」
安堵からか声を出して泣いた。
大翔は私の手を引くと無言で歩く。
私は俯いたまま着いて行った。
電車に乗り、また歩く。
「おいで。」
神崎と書かれた表札。
大翔の家だった。
最初のコメントを投稿しよう!