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何だ、始めのあの間は―――
男が不審に思っていると、声の主は一段と高い声で笑っていた。
『……まぁいいや。
風邪でもひかれたら困るし。
報告書は後日書きにきたらいいから、今日はもう帰っていいよぉ~。』
「わかりました。
でもまぁ、次から雨は勘弁してくださいね?
さっきも集中豪雨並に降っていたんですから……。」
『いやぁ~依頼をまわすことは出来るけどさぁ、さすがに天気までは無・理。
潔く諦めちゃってぇ~』
そう言ってまたひとしきり笑った後、一方的に電話を切られた。
力強く電源ボタンを押したのか、《ブツッ》という音がやけに大きく響いたような―――
まぁいつものことなので、男は特に気にしたそぶりも見せずに携帯をしまった。
「それよりも……」
そう誰に聞かせるわけでもなく呟くと、男は自分の姿を見下ろした。
「どぉしてくれるんでしょうね、これは……」
水を吸ったコートは、結構重い。
いや、それよりもこの見事なびしょ濡れ―――
「……クリーニングにださないといけませんね……」
男は疲れたようにため息をつくと、足早にさって行った。
そして、男の去った後には、何も言わない屍となったモンスターの山しか残っていなかったのだった。
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