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この屋敷に勤めている使用人は、全員鷹夜が学園に通うことになったことを知っていたということだ。
しかも回覧板で回っているって―――
鷹夜はなんとも言えずに、遠い目をしていた。
「鷹夜君~?」
「っ……?!
すいません、ちょっと自分の世界に入り込んでいました。」
急に黙ってしまった鷹夜を心配して、糸が下から顔を覗き込む。
背筋を伸ばして座る鷹夜よりも腰の曲がった糸の方が座高が低いので、必然的に下から覗き込むようになってしまうのだった。
「あらまぁ……今日から学園でしょう?
初めてのことで、疲れたのかもねぇ。」
「そうですね。
よく考えてみると、学園で学ぶということは初めてですから。」
糸のころころとした笑いに鷹夜も微笑み、ほんの少しさめたお茶を口にした。
この屋敷に勤め始めてはや10年―――
まりえお嬢様がリベリア魔術学園初等部の1年生のときに、鷹夜はこの屋敷にやってきた。
そして初等部を5年間、中等部を3年間、今年で高等部2年目を、鷹夜は仕事をしながらまりえを見てきたのだ。
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