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そんなことをつらつらと考えていると、糸はくすくすと顔を綻ばせた。
「鷹夜君は、幼いころからずっとここで働いていたからねぇ。
同年代との触れ合いの場を、旦那様が用意してくれたんだよ。」
糸の言葉に鷹夜は再び目を丸くした。
「そうだったんですか?」
「おや、聞いていなかったのかい?」
鷹夜が少々驚いて糸に聞くと、逆に意外そうな顔で聞き返された。
「えぇ。
私はてっきりお嬢様の護衛かと……」
「いぃえ、旦那様はそんなことおっしゃられていませんよ。
学園への編入は、ささやかなプレゼントだと楽しそうに話していました。」
そう言って糸は思い出したように手を叩くと、いそいそと畳の敷かれた奥の部屋へと歩いていった。
「糸さん……?」
急にどうしたのかと鷹夜が奥を覗き込もうとすると、糸が何やら小さな包みを持って戻ってきた。
鷹夜は不思議そうな表情で糸を見ると、糸は満面の笑みを浮かべてその包みを鷹夜に手渡す。
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