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その渡し方があまりに普通だったので、鷹夜は何かを言う前に受け取ってしまった。
「糸さん、これは……」
「まぁまぁ、開けてみなさい。」
困惑した目を向ける鷹夜を半ば無視して、糸は早く開けるよう促してくる。
一体なんだろうと思いながら鷹夜は包みに手をかけると、ゆっくりと丁寧に包みを開いていく。
ガサガサと開いていくと、手の平と同じくらいの大きさの箱がでてきた。
そしてその箱に施されている刻印―――
2頭の馬が向き合っており、その背景にはクロスされた双剣。
そして真ん中を突っ切るように、『J』の頭文字が書かれている。
「これって……」
そう言って鷹夜は糸を見ると、再び刻印に視線を戻す。
この刻印は、鷹夜がよく知っているもの。
いや、この世界では誰もが知っているだろう。
鷹夜は痒くもない頬を掻きながら、ゆっくりと箱を開けた。
そこに入っていたのは、綺麗な紫紺のピアス。
紫紺の宝石―――アメジストは小振りながらその存在感を遺憾無く発揮し、金の土台がひきたてるように輝いている。
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