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「グラン様のお屋敷に、ですか?」
「屋敷、というほどのものではありませんが・・・。
はい。
貴方方の身を守るためです。
ガレットに会えないのは辛いでしょうが、お聞き届け下さい」
申し訳なさげに頭を下げるグランに、ルニアはニッコリと笑った。
「グラン様が謝る必要はありません。
わたし達のことを思って下さったのでしょう?
感謝こそしても、責めることなどありません」
朗らかに、軽やかに笑うルニアにホッとしたように微笑む。
期限は1年。
その間我慢すれば、ガレットとルニアは共に過ごせるようになる。
「グラン様。
この子の名前はどう致しましょう」
「それなら、ガレットから預かっていますよ」
「まぁ、どんなものですか?」
「レネス・ガレット、と」
名を告げると、目を見開いて次の瞬間にはコロコロと笑った。
「なんて素晴らしい」
「全く、アレの親バカっぷりには閉口します。
息子の名に、自分のものだと言う印をつけるなど」
呆れながらも笑みが含まれた声で言うと、グランはルニアの腕の中にいる嬰児を見る。
規則正しい寝息を立てる、小さな嬰児。
長じて家庭教師が必要になれば、グランがそうなるだろう。
その時は容赦なくやらせてもらおう。
先々の温かな未来を思い、グランは幸福そうに微笑んだ。
その笑みに、ルニアも笑う。
後に降り懸かる、絶望を知らず・・・。
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