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グランの屋敷は王都にある。
そこには、年老いた両親と代々仕えてくれている数人の使用人がいるだけだった。
本当は地方に行った方が良いのだが、グランが突然王都から消えれば、それだけで見破られ兼ねない。
そして、多大な危険と隣り合わせのままルニア親子を匿った。
健やかに育っていくレネスを見て、両親は孫が出来たように喜んだ。
代々学者の家系であるディズ家は、総じて晩婚であり、子が産まれるのも遅い。
そのためか、実の孫でなかろうとも赤子の存在が嬉しいらしいのだ。
傍目には、幸せな家族風景だっただろう。
実際、平凡なほど幸福な日々が続く。
グランは王宮で政務に励みながら、ガレットに報告し、ガレットはグランを妬みながら愚痴をこぼす。
そんな日々が、当たり前の日常となって3ヶ月。
グランはガレットに付き合って王宮に泊まり込んでいた。
最近、母親が風邪を引いて寝込んでいる。
ルニアがいるから心配はないが、帰らずにいてからもう5日だ。
やはり少し気になる。
今日は絶対に帰ろうと思っていると、ディズ家に仕える初老の下男が王宮に来ていると言われて王宮の門まで行くと、青い顔した下男が唐突に土下座した。
もしや母の容体が悪化したのか。
60の半ばを超えた母は、風邪でも命取りになり兼ねない。
だが、下男が発したのは信じられない・・・信じたくないことだった。
青い空に、黒い雲が流れる。
雨音と雷鳴。
凶事の象徴が降り注ぎ、グランの心を凍り付かせた。
告げられたのは、ルニアの死
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