愛ゆえに

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カルクタニア王国王都レトゥニ。 荘厳な王宮の玉座に座すのは、『聡王』ガレット・フォーラ・カルクタニア。 その傍らには、いつも親友である『賢者』グラン・ディズがいる。 だが、今日はいない。 彼は今、王都から離れた森の中にいた。 避暑目的に造られた別荘だ。 長年ほったらかしにされていたここに、2人の老女と1人の女性、そして、グランがいた。 出産間近の女性の枕元で、グランは椅子に座っている。 「気分は大丈夫ですか? ルニア様」 「・・・グラン様。 わたしなどに敬語を使わないで下さい。 わたしはただの侍女だったのですから・・・」 「そうは参りません。 いくら親友の愛する方であろうとも、その親友は王であり、貴方はその寵愛を受けた方なのですから」 どこまでも真面目に、頑固なグランに諦めたように苦笑する。 「気分は悪くないんです。 初産ですから不安はありますけど・・・。 大丈夫です。 グラン様がいらっしゃいますから」 肩で切り揃えた漆黒の髪。 大きな温かい琥珀の瞳。 鼻の頭にそばかすの浮いた白い肌。 とりわけて美しいわけでもない少女めいた容姿の女性は、今年で20歳になる。 名はルニア。 姓がないことから、彼女は平民だと分かる。 容姿も、身分も、能力も、平凡な女性は、カルクタニア王ガレットの子を身籠もっていた。 .
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