愛ゆえに

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嫉妬深い王妃オリビアの魔の手を恐れ、身を隠しているのだ。 現在、王妃には王子がいる。 それが次の王に決まっているのだが、彼女が産むことで、自分への関心が薄れることを恐れたのだ。 名はエルバルト・レイン・カルクタニア。 6歳になったばかりの少年は、母親に甘やかされて傲慢に育っていた。 あの王子には仕えたくないなと思っているグランは、ルニアの子供が男であることを望み、エルバルトよりも優秀であれば良いと思っていた。 いかに親友の子といえども、君主足り得ない者に膝を屈するのは嫌だった。 「・・・本当に、王宮に戻られるのですか?」 「?もちろん。 だって、あそこにはガレットがいるんですもの」 フワッと微笑み、紡がれる言葉に、グランは苦笑する。 王を名で呼び捨てにするのは、王家の者を除けば、グランとルニアだけである。 本来、后でも、現にあの王妃も王を呼び捨てにしない。 それが、元侍女である平民の愛妾が呼ぶのだ。 恐れ多くて出来るはずがない。 なのに、こともなげに笑って、ルニアは幸せそうに微笑んでいる。 それを見て、親友の女を見る目は確かだったのだと知った。 「王宮は、貴方にとって苦しみにしかならないでしょう。 下手をすれば、貴方や御子の命が・・・」 「ガレットが・・・」 グランの言葉を遮り、ルニアは慈愛に満ちた母の表情でグランを見つめる。 .
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