愛ゆえに

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短く切った艶やかな漆黒の髪。 切れ長の青い瞳。 滑らかな象牙色の肌。 かっこいいと言うよりも、綺麗と表現するのが正しかった。 実際、多くの女性からアプローチを受けている。 だが、それを受け入れる気はなかった。 理由は、愛する人がいるから。 「結婚は、しないでしょうね。 心に決めた人がいますので・・・」 「まぁ・・・。 その方とは・・・?」 「叶うなら・・・。 ですが、叶わないでしょう。 彼女は、すでにあの世の人ですから」 優しく微笑むグランに、ルニアは申し訳なさそうな表情を浮かべ、頭を下げた。 「申し訳ありません。 何も知らず・・・」 「大丈夫です。 今は、彼女との思い出が私の宝ですから」 和やかに笑いあい、温かな空気が流れる。 だが、それは唐突に乱された。 「うっ・・・!」 「ルニア様っ!? イーアッ、リニィッ。 早く来てくれ!」 陣痛が始まり、ルニアは2人の老女に連れられて分娩室に入った。 1人残されて、ポツンとたたずむグランは天井を仰いで息を吐き出す。 分娩室の前に置かれた椅子に腰掛けて指を組み、祈りを捧げるように額をくっつける。 そして、心から情けなく思うのだ。 こんな時、男は役に立たない。 .
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