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翌日の明け方に、元気な産声が響いた。
ハラハラしながら待っていたグランは立ち上がる。
中から痩せた老女、イーアが出て来て額の汗を拭いながらニコッと笑った。
「元気な男の子です」
グランは母体も大丈夫だと聞き、ホッとして老女達に後を任せた。
イーアが中に入ると、笑顔を一変させて厳しい表情になる。
(王子・・・。
波乱が、起こる・・・)
男子の誕生に、あの王妃がどうでるか。
それが怖かった。
下手したら、親子共々消してしまいかねない。
よくて追放か。
そこまで考えて、グランはどうするべきか迷った。
ガレットに教えるべきか否か。
本来、教えるのが普通だ。
しかし、教えることによって王妃にバレたら・・・。
武術はからっきしのグランでは守れない。
逡巡し、グランは決した。
せめて1年。
子供と母体の体調が確実になるまで隠そう。
ガレットには耳打ちし、しばらくはグランが面倒を見よう。
そう結論付けて、王都に向かう。
失う訳にはいかない。
親友がようやく見つけた幸福を、奪われる訳にはいかない。
固く拳を握り締め、グランは王宮を辞する覚悟で歩を進めていた。
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