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王の私室にて、グランは真剣な表情で親友を迎えた。
「グランッ!
早かったな。
で、どうだった?」
入って来て早々に、ガレットは飛び付かんばかりに親友に駆け寄った。
グランは仄かに微笑みながら、口を開いた。
「まずは座ろう。
疲れているんだろう?」
労ってくれる親友に首をかしげながら、ガレットはグランの向かいに腰を降ろした。
「珍しいな。
お前が労ってくれるとは。
いつもなら蹴っ飛ばしつつ仕事をさせているのに」
軽い冗談のように言うが、グランの表情が変わらないのを見ると、表情を引き締めた。
脳裏に、最悪の事態が思い浮かぶ。
「・・・グラ」
「元気な子が産まれた。
ルニア様も無事だ」
早口で告げられてホッとするが、やはりいつもとは違う友の様子に眉を顰める。
「どちらだ・・・」
「男・・・王子だ」
それに、ガレットは納得した。
グランの表情が張り詰めていたわけが分かった。
「・・・しばらく、伏せてはどうだ」
唐突なグランの言葉に、友を信じられないものを見るような目で見る。
「それは、ルニアと子供を、と言うことか・・・?」
ただ頷く。
それに、ガレットはカッとなって立ち上がる。
「お前はッ!
俺に子を抱くなと言うのかッ。
待ち望んだ、最愛の人との子をッ!」
ただの人ならば普通の叫び。
だが、ガレットは王だ。
グランは痛む心を隠しながら、ガレットを見上げる。
怒りに燃える年上の親友を。
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