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「私の使い魔、風竜のレイがあなたを見た時に違和感を感じたらしい。人のようで、竜のような相反する魔力が入り交じった、そんな感じがしたって言っていた」
「まさかとは思うが、君は……」
レイと言われた男は気まずそうに喋り始めると、少年は哀しそうな目で、その言葉の続きを受け取るように言葉を発する。
「やっぱり『同族』は、しかも上位種は騙せませんね。僕は――竜の、咎人です」
笑って言った少年の顔はどこか淋しく、哀しく、湖面の揺らめきにさえ消されそうなくらい、朧気に見えた。
――竜の、咎人。
今も昔も、世界には変わらない事というものがある。
それは、異種族間での交わりの禁止。
これは異種族間では奇形児の生まれる可能性が高いのと、元々違う理で生きる者同士が共に生きるには障害が多すぎるという、長く続いた歴史に基づいた事であった。
だからこそ人間は自分の領域を広げようとはせず、他の種族も入ってこようとはしない。
それが長い年月と、幸せになれないと分かってても愛し合い、悲運の最後を遂げた者達から得た教訓であった。
――しかし、そんな中でごく稀に『希望』を掴める者達がいた。
その希望とはすなわち――子供。
健康体の子供を持つ事は愛し合う者達にとって、まさしく二人の愛の結晶といえた。
しかしこの世界でそんな子供が生きるのは、愛し合うのと同様に難しかった。
二つの種族の力を受け継いだ子供は俗に『咎人』と言われ、更に種族によって分類された。
そう……決して人ではされないような、分類をされた。
竜の咎人とはその名の通り、竜と人の間に生まれた子供の事を指す。
そしてその力は、咎人の中で最も畏れられ異端視される、竜の魔力と凶暴さを人の身体に押し込めた『化け物』とされていた――
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