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霞んだ雲の広がる青空。
まるで寄り添うように、しかし朧気(オボロゲ)に漂う二つの月が見守る中、広大な草原には一つの集団があった。
皆一様に黒のマントを着け、しかし中に着込んだ服は装飾美しいものばかり。
高級さを傍目にも感じさせる服を着込んだその集団は、見ればまだ年若い少年少女ばかり。
まだ幼さの残る彼らが見つめる先、そこには一人の少女がいた。
皆と同じように黒いマントを羽織り、淡い桃色の長髪が風に揺れている。
少女が片手に握るのは細く小さな杖。
緊張の面持ちな少女の視線の先、そこには模様の刻まれた地面が広がっていた。
「どうしたのですミス・メサイア。早く『呼び醒ましの儀』を始めて下さい」
と、集団の中から甲高い声が少女にかけられた。
見ればそこにいるのは細身のスーツを着込んだ、いかにも仕事の出来そうな女性。
一人だけ大人のその女性は他の者と同様に杖を持ち、無言で立つ少女に更に言葉を飛ばす。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。この儀式は魔力があれば誰でも出来るもの。魔法の技術うんぬんは関係ありません」
『魔法の技術うんぬん』という部分でギクリと身体を震わせた少女。それに合わせるように、集団の中から可愛らしい声が響いた。
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