~第一幕~咎を持って生まれた者

4/11
141人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「…………」 光が消え、召喚時特有の煙が消え、視界が開けた時、少女は思わず無言になった。 ――成功したと思った。 成功したと思ったのに今、目の前にいるのは―― 「人……間の、使い魔?」 集団の誰かがそう呟いた瞬間、まるで結んだ口が開くように大きな笑い声が上がった。 所々ではなく、今回は全体から。 「さ、さすがメサイア家のご息女! まさか人間を召喚するなんて!!」 「これじゃあ魔法の技術うんぬんじゃなくて、もう魔法使い失格だろう!!」 大声を上げて笑う声達にやっと気付いた少女は、途端に顔を赤くし伏せてしまう。 手に握る杖はワナワナと震え、顔の赤みは耳まで達する。 (何で……何で何で何でっ!?) ――サーヴァント・リペクト。 ヨーグ大陸に点在する多くの魔法学院の中で一番歴史深い、ここインクリス魔法学院では一年生が二年生に上がる際、使い魔を召喚する儀式が行われる。 通常呼び醒まされる者、例えば火トカゲや土モグラ、水蛇や風竜など、人とは異なる理(コトワリ)で生きる者が召喚される。 召喚された者は召喚した者の盾となり、矛となり、相棒となり、家族となる。 それは魔法使いの卵である少年少女らが最初に経験する、大きな人生の分岐点ともいえる。 歴史ある儀式の中で『人間』が呼び醒まされた事は無い。 呼び醒まされるのは絶対に、人間と違う理の者だけなのであるから―― 「……ミス・メサイア」 「は、はいっ!?」 先生の暗い声を受け、少女は背筋を伸ばし硬直した。 先生は顔を伏せたまま、肩を震わせながら少女に近付いてゆく。 無理もない――と少女は思う。 だって自分が召喚したのは人間。しかも男の子。 歳は自分と変わらないようだが髪は伸び放題で服はボロボロ、平民の中でも貧相と位置付けされる身なりをしている。 先程から自分を見つめてきていて、伸びた前髪から覗く目が意外と鋭くて何だか恐い。 というか―― 「……何見てんのよ」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!