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無性にムカついた。
元はと言えば自分がこんなに笑われたのは、恥をかいたのは全てコイツのせいなのだ。
コイツが出てきたせいで自分は笑われて恥をかいて、だから自分は悪くないのだ。
かなり無理矢理な理論を頭の中で立てると少女はとりあえず――蹴った。
「――!?」
偶然、蹴りが脛に当たったようで少年は痛みに堪えるように転げ回った。
それを見て更に笑い出す集団、慌てて駆け寄る先生、見下ろし腕を組む少女。
「ななな……何をしているのですかミス・メサイア!! この人はあなたの使い魔になる人なのですよ!!」
「えっ?」
怒鳴るように聞こえた先生の声に、少女は思わず聞き返してしまった。
笑っていた集団も驚いたように静まり、有り得ないといった表情で先生を見る。
「これから長く付き合う使い魔にそのような態度はいけません。二人は支え合い、頼り合う、守り合わないといけないのですから」
夢見る乙女のように両手を胸の前で組む先生。
まぁ、歳を考えると少女というには無理があるが。
「ちょ、ちょっと待って下さい先生! だって人間ですよ!? しかも平民の更に下のような格好の、男の子ですよ!!」
「ええ、それぐらい見れば私だって分かりますよ?」
「おかしいでしょ! 人間を使い魔なんて、だって前代未聞ですよ!?」
その言葉に先生は頷くと、優しい笑顔をシエルに向けた。
「確かに人間が呼び醒ましの儀で現れたなんて、私は知りません。過去そんな記録があったという覚えもありません。しかし――」
先生はシエルの両腕をがっちり掴むと、熱意ある眼差しで見つめてくる。
「諦めてはなりません! もしかしたら彼は人一倍掃除が早いとか、料理が上手とか……そ、それに意思の疎通はどの使い魔よりも簡単にできますよ!? だからっ、その――」
「……先生、途中から目が泳ぎまくってるように見えたのは私の気のせいですか?」
冷ややかな言葉に分かりやすいくらい動揺する先生。
シエルは大きなため息を吐くと、先生の真意を見抜く。
――要は、同情されたのだ。
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