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「――有り得ない!!」
ドンッと勢いよくグラスの置かれた音を聞き、食堂に集まっている生徒達は驚いた顔でそちらを見る。
しかし音を鳴らした張本人は意に介した様子もなく、更にグラスに赤色の液体を注ぎ一気に飲んだ。
「――何で! いきなり! いなくなってんのよっ!!」
歯をむき出して叫ぶ少女。
そして少女に近付く、数人の集団。
「あら~、凄い荒れてるわねぇシエルちゃん?」
「…………」
先頭に立っていた少女に話しかけられたが、シエルはそっぽを向いて無言でワインをあおる。
「昼間からワインをがぶ飲みするなんて。あぁ、私には出来ないわそんな事~」
そんな事しないで下さいリーリアちゃん! ――と周りの取り巻き男子が叫ぶ中、少女は更に続ける。
「それで? 今や学院一の『話題の使い魔』――いえ、『話題の平民』はどこにいるのかしら~?」
一気に巻き起こる笑い声。
それを聞いて、シエルは敵意むき出しの目でリーリアを見る。
「毎度のように私に突っ掛かってきて、そんなに同性の友達が欲しいの? ハンニアース家のご息女さん?」
鼻で笑うように言ったが相手はまったく動じた様子なく、余裕の顔でこちらを見る――
「…………!!」
――とはいかずに、途端に両目は涙を溜める。
「あ、あなたなんか絶対に友達になってあげないんだから~~!?」
いつもの負け口上のようなものを叫ぶと、リーリアは食堂の出口へ走っていってしまった。
無論、取り巻きの男子も慌てて後を追いかける。
そうして一人残されたシエルは、また手酌でワインを注ぐとグラスを傾けた。
ぷはーと女の子らしからぬ息を吐きながら、思う。
(何なのよ――あいつは!!)
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