はじまり

5/10

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
   トラックはもう去ってしまった。思い出と共に、戻っていった気がする。俺の胸の中に、強い何かがあると気付いた。荷物を家に運び込んだ、父は寝てしまった。 「長旅につかれたんだろうな。」 母がそっと父に布団をかけていた。   「母さん?ちょっと走ってくるね。」 「ゆうーまだ慣れない道だから迷子にならないでよね。」 「わかってるよ。俺を何歳だと思ってるんだよ!」 「えー高校生になるんだっけね。夕食までには帰って来なさいよ。」 「わかった。いってきます!!」   俺は運動部ではない。ずっと文化部だった。でも毎日のランニングは欠かせない。  俺にとって走ることが、使命のように思えている。突然の事故による友達の死...俺が毎日の散歩をサボっていたことに後悔したのだ。シロ俺は走るからね。一緒に散歩できなかった分、走るから、許してくれ!    そしてランニングを続けてるうちに、孤独の時間も悪くないと思った。1人でもくもくと走り続ける事が楽しくなってきた。  周りの景色を見ながら、小鳥の声を聴きながら、小さな子供が騒いでいると俺も微笑み、ゴミをあさるカラスに怒る。    何気無い日々がウキウキの連続だったのだ。そして今日も初めてはしる道なだけに、胸がはずんでいる。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加