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「シスター」
背後から届いた透き通るような美しい声にシスターロゼは懺悔の途中にも関わらず振り向いた。
この間、教会で預かることになった8歳の少年だ。名をロア・イシェルといった。
「なにかしら、ロア?みんなと遊んでいたのでしょう?」
黒髪に黒い目、黒の映えた白い服を纏っていた。其の瞳の底に静かに暗く在る感情を彼女は知らず
「ねぇ、そんなことをしているんだから…神様はどこかにいるの?」
彼女は
「ええいらっしゃるわ。見えないかもしれないけど主は貴方達を見守ってくださるわ。」
少年は
「じゃあ、アリスやパパとママが死んだところも神様は見ていたんだね」
彼女はここで初めて自分の言動の過ちに気がついた。が、最早、其れを無かったことにも出来ることなく。
「ロア…」
少年の瞳に写る彼女は悲しいくも困ったように、彼女自身をみつめていた。
「なら、ボクはそんな人はいらない…」
そう言って走り去る少年を引き止めることも出来ずに、只々行く末を見守る嘗ての自分を彼女は今でも
夢に見るのだ。
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