銀の賢者の後継

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「っ、速い!」 三発目の氷の矢が予想外だった兎乃香は反撃の体勢から回避へと移行し、その矢をかわす。 「・・・・・・今のでダメですか」 三発全て防がれ、アサリィの方にも若干落胆の色が見える。 「いえ・・・・・・驚きましたよ、一体何をしたんです?」 「単純ですよ、先に精霊を集めるだけ集めて、小出しにしたんです」 兎乃香が【雷光の矢・スパークアロー】を放った際、本来ならばアサリィの方が先に攻撃できるだけの精霊を既に集めていた。 それをギリギリまで続け、三発分の精霊を精製し、放った。 言ってしまえばそれだけのことではあるが、その難易度はかなりのものである。 その言葉で天火と兎乃香は驚いた顔で、ハノンは嬉しそうな顔をする。 「その練習は真っ先にやったからねぇ、とはいえ、あそこまで綺麗にできるとは思わなかったよぉ」 精霊一体一体に個体差はあるが、自我は基本的に小さい、それら一つ一つと対話して、混ぜ合わせることで特殊精霊は生まれる。 そして、自我は小さい故に、集めて魔術を放つ時に全ての精霊が力を行使する。 だからこそ、精霊を小出しにするというのは全ての精霊と対話して、一体一体に力の行使と待ての命令の二つのどちらかを常にしなければならない。 それはつまり精霊の完全制御であり、超々高難易度の魔術技術の一つとなる。 「天才・・・・・・ですね」 「やですよぉ、ハノンさんの教えかたがうまいからです」 「それでも十分すごいとは思いますけど」 「そんなこと【ないですよぉ・ファイアーボール】」 「っ!?」 呪文の書き換え、ハノンが得意とする技術による奇襲。 さすがに驚きながらもすぐに反応して、 「【大地の盾・アースシールド】!」 即座に生成した盾で炎弾を防ぐが、さすがに精霊の少なかったソレは完全に砕かれた。 「っ、やりますね」 「今なら初見奇襲が効きますから、この一回、勝たせてもらいますぅ!」 アサリィは叫んで両手を振り下ろす。 「【氷槍の雨・アイスランスレイン】!」 「上っ!?」 精霊を自分から離れた位置に集める。 これもまた高難易度の技術で、集められた精霊を相手に利用されるという危険もある。 しかし、精霊を集めていることを隠して奇襲することができる。 「決まれぇぇぇぇっ!」 アサリィには似合わない叫び声を上げながら、氷槍の雨が兎乃香に降り注いだ。
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