『何でも屋』

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  「そう言えば、知ってる?最近、砂漠で起きてる事件のこと」  一通り、仕事の話が終わったところでディックが世間話を持ち出した。 「知らねぇ。勝手に話した後で情報料ふんだくるなんて真似はよせよ?」 「そんなことしないわよ。常連さんに対するサービスよ、サービス」 「ありがとよ、嬉しいね。そのサービス精神で依頼紹介料を報酬の三割にしてくれるってんならなお嬉しい」 「ベットの中でなら、たぁっぷりサービスするわよん」 「その話は止せ。てめぇを撃ち殺しそうになる」  などと他愛もないやり取りの後にディックは洗い物を片付けて、俺の隣に座った。 「ここ数年のバードラワームの被害はせいぜい四、五人食べられたくらいだったんだけど、最近連続して商隊が襲われてるのよ」 「で、なんだ?それが人為的なものだとでも?」 「わからないわ。ただ、襲われてるのが商隊だけっていうのと始まったのが子供奴隷解禁の時期と重なってるっていうので少し引っ掛かってるのよ」  子供奴隷解禁  それは一ヶ月前から始まったことだ。  本来、パラダイスは無法だが、商人は別だ。  ヴァーシーア農国と貿易するにあたって農国の法律に縛られる。  その中に子供奴隷の禁止というのがあり、それを破ろうものなら暗殺されたり、俺みたいな『何でも屋』に殺しの依頼が来たりする  まあ、西区に住んでいる奴らのほとんどはそんなことにも手を染めているんだが。
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