冬と空と雨と……

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  「なぁ仙十。金借してくんね?」 またかよ。 「いつも言ってますけど、俺、必要最低限以外は預けちゃうんで」 俺は先程浮かべた笑顔を使い回し、分からない程に微かに歪め、少々の皮肉を込めながらそう言ってやった。 「ちっ。しけてんな」 駄目店長がパイプ椅子を傾けながら、ダルそうな声でそう呟く。 俺はそれには何も返さず、狭いスタッフルームの殆どのスペースを奪っている鉄製のロッカーを開け、中から薄緑色の制服を引きずり出して、黙々と笑顔を打ち消しながら着替え始めた。 一々こんなのに反応してたら気がもたない。 サッサと着替え終わった俺は、レジには入らず、服を入れる用のロッカーの横にある掃除用具入れのロッカーから掃除道具を出して、掃除を始める。 人がいない時間帯に掃除をしとかないと、埃が舞ったり、掃除しにくかったりと大変だからな。 正直、こんな日のこんな人通りの少ない場所に、こんな時間帯のコンビニに来るのは、少しお金を稼いだボロ布を纏ったホームレスか、顔を真っ赤に染めヨロヨロと歩く、酒を切らしたおっさんだけだ。 そして、十分程店の変な模様の床を掃除していると、ピンポンピンポンというコンビニの自動ドアが開く時の奇妙な音と共に自動ドアが開き、客が入ってきた。
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