誕生

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コンピュータが並ぶ部屋には何人かの科学者達が画面とにらめっこをしていた。 「ではこれよりモデルナンバー000、コードネーム『百合子』の最終審査、及び始動準備を行う。」 樋山が合図を出すと科学者達はデータを打ち込み始める。 「大崎教授、あなたにはAIチップの最終確認を行っていただきたい。」 「人工頭脳ですね。」 「あなたが海外から送ってくれた資料に基づいて作ったものです。」 僕の目の前の画面に莫大な量のデータが表示された。 「…たしかに。僕が考えたAIだ。しかしまさか人造人間に使われるとは。」 「こんな時代だ。あなたも薄々は感づいていたでしょう。」 「……。」 僕が海外にいた時、日本の樋山という男からメールが届いた。 人工頭脳の資料を作って欲しいという内容だった。 報酬に惹かれた僕は、何か違和感を感じながらも資料を送ったのだ。 樋山に呼び出されて日本に着いた時、人間開発を聞かされた時は驚きを隠せなかった。 「AIは問題ありません。」 「そうですか。」 樋山は少し彼女を見つめた後、こう呟いた。 「女神誕生だ……」 樋山の口元が緩む。 「AIを埋め込め!『百合子』始動だ!」 樋山がそう言うと、大袈裟な機械が小さなAIチップを直接頭に埋め込み始めた。 「樋山博士、直接頭に入れて大丈夫ですか?」 「まあ見ていて下さい。」 機械が人間の頭に突き刺さっているグロテスクな光景に僕は目を細める。 機械が頭から外れるとそこには小さな穴が空いた。 「樋山博士…。」 「見ていて下さい。」 僕の言葉を割って樋山が言った。 僕は穴の空いた頭をじっと見た。 「何だあれは…」 「大崎教授、私たちがなぜAIチップを外部から直接埋め込んだのかお分かりですか?」 「…実験…ですか。」 「そう。今まで何度も繰り返された実験ですが、どうしてもあなたに見ていただきたくてね。」 僕の目に映ったのは、彼女の頭に空いた穴が徐々に塞がっていく光景だった。 「これが再生機能。人体のいかなる場所に傷が付いても、短時間で再生する。臓器も肌も全て。搭載した機械を最小限に抑えたことにより実現した、不老不死の体です。さすがに内部の機械が壊れてしまえばお仕舞いですがね。」 「再生機能…。」 もうすでに僕の感覚は麻痺していた。 日本に着いて全てを聞かされた僕には目に映る全てが不思議だった。
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