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「はっ!今の電車でよかったの?!」
下車した人混みが落ち着く中、男はさっき以上にあわてて私の腕を放した。
(突っ込み所満載なんだよ…)
「…次の電車に乗るからいいです」
私はプイッと男に背を向け、さっさとコイツから離れようと足早に車両の目印を見ながら後方へ歩いていく。
「…っ!まってッ!」
背中に男の声がかかるが、私は聞こえないふりをした。
「ぅぅ、まぢで待ってぇ……」
泣きそうな声が聞こえる。
それでも無視。
(ってか、ついてくんな)
「…僕、キミと同じ高校の3年で平賀央太」
(制服みりゃわかるわ)
「僕、学校でキミに助けてもらって…」
(覚えてない)
「…あ、花壇のチューリップ、僕が荒らしたんじゃないんだ」
(なんの話だよ)
「なんの話してんだっけ?」
(バカこいつ)
「……あ!それで…………」
ついにホームの最後尾まで歩き、駅の屋根の無い場所にたどり着く。
雨はまだ止まず、仕方なく傘をさした。
(あー…次の電車、何分かな)
「そ、それで僕」
(あ、あと2分か)
「………好きになっちゃって」
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