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(………)
「あのぅ……聞いてる?」
その言葉に、またもイラっときた私は傘と一緒に思い切り振り返った。
「ったく、うるさい!
大体イキナリ告白してきて、もう少し状況考え…」
勢いの良かった私の声は弾かれたように途切れた。
(…なに泣いてんだよ)
傘も差さずに私の後ろにたたずんだ男は、惨めに肩をすくめ、雨に濡れた顔で涙を流していた。
「なんで泣くのよ」
私がぶっきらぼうにそう言うと、男はフルフルと首を横に振り否定してみせた。
「………こっち見てくれないんだもん…」
潤んだ瞳。
よく見たら中性的な顔立ち。
少しいじけたように、口が尖っている。
耳をぺしゃりと垂らした、まるで子犬の様。
なんだか超可愛く見えてきた。
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