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冷蔵庫を担ぐ。 …重い。 握りしめて爪が食い込んでできた傷に冷蔵庫の重みが容赦なくかかる。 それでも、そんな事かまっていられない。 俺は、ありたっけの力で持ち上げ勢いをつけドアに向かって行く。 鈍い音がした。 ドアにぶつけた拍子に手がはさまり激痛が走る。 ………開かない。 あんなに勢いをつけたのに…。 「おい!開けてくれ!開けてくれ!!大貴が…!大貴が…!」 情けない…。 情けなすぎる…。 開けてくれ…。 もう、止めてくれ…。 開けてくれと叫び続けたが、ドアが開く事も、窓越しの状況も変わる事はなかった…。 大貴は、ただ1人座り込み、周りの集団はただ、できるだけ離れた位置にいた。
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