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大貴…。 ごめんな。父さん、守ってやれなくて…。 ごめんな。幸せにしてやれなくて…。 俺…大貴がいて幸せだった。 2人の生活が始まった当初は、何で泣いているかわからなくてイライラしてしまったりしたけど、大貴がふとした時に笑ってくれると、頑張れる気がした…。 初めて、離乳食をあげた日は、赤ちゃんらしくないすごい渋い顔したな…。 いつの間にか寝返りができていて、父さんが目を離したすきに落ちてしまって焦ったよ…。 よちよち、歩きだした時はいつお前が転ぶかって心配で仕方なかった。 初めて熱を出した日は、父さん、何をしていいのかわからず、ただ居てやる事しかできなかった。 「パパ」って大貴が言ってくれた時、心底嬉しかった。 入園式では、人見知りして入り口で座りこんじゃったよな。 保育園で書いた絵を自慢気に「これ、とおたんだよ。」ってプレゼントしてくれた。 何の絵だか分からなかったけど今でも大切にしまってあるんだ。 大貴…。 大貴……。 ごめんな…。 俺のせいで…。 大貴を守りたかった。 大貴の笑顔を見ていたかった。 俺のせいで……。 俺のせいで……。 大貴の未来を奪ってしまった…。 薄れていく意識の中で、大貴を強く、強く抱きしめた。
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