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………………突然…、雨が上がった。
「………………?」
そして、誰かが肩の服を引っ張っている…。
(…いったい誰だ…?)
死にかけた目で雨の降らない空を見上げた。
そこには、一部だけが夕焼けの様なオレンジ色に染まった空が見えた…。
そして、隣には虹色のスケッチブックを大事そうに抱えた少女が俺の服を引っ張っていた…。
「………誰……?」
聞いたが、答えてくれない…。
ただ、俺を心配そうに見つめ、服を引っ張っていた。
「……お前…なにがしたいんだ…」
俺がそう問うと、少女はどこか高いところを指さした。
少女の指さす方向を見上げた。
そこにはうっすらとだが、建物が見えた。察するに…、マンションだ。
「……あそこに…来いと…」
そう思い、尋ねてみたところ、少女は長い赤茶色の髪を揺らし、うなずいた。
「………すまない…
…今…動けないんだ…」
今、無理に動かしたら体が壊れてしまいそうだ…。
「………………」
少女はゆっくりとかがんだ。
「……背負う気か…」
俺にオレンジ色の傘を持たせ、おんぶをしようと背を向けた。
「…お前には……無理だ…」
…仕方がない…。無理矢理立ち上がるか…。
……このままだと、この少女が風邪をひいてしまう…。
…それは天使として…
……元天使として、それはやりたくはない…。
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