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次に目を開けた瞬間、俺は目を疑った。
今の今まであったはずの町が、たった一発…、たった一撃の神撃によって、跡形もなく消え去った。
道路も建物も、すべて消え、残っているのは、赤茶色の土と異常なまでの砂ぼこりだけだった。
「……くっ……」
その光景を見ただけで、吐き気がした。こんな事までして、自分が統べる【真の平和】が正当だと思っているのか…!!ミカエルは……!!
「そう、悔しがるなよ。お前の大好きな人間どもは灰になったが、安心しろ。
その魂は実験体を作る為の動力源になるからな」
そう言い、ミカエルは手首を下に返して、凶神に指示を出した。すると、凶神は砂ぼこりを突き破り、地面が露出した地上へと急降下して言った。
「あとはあいつが勝手に魂を集める…。そして、この騒ぎを聞きつけて狼もくるだろう…。
あれなら、良い凶神になるだろうな」
ミカエルのにやけ面に腹が立った。だが、俺は焦る気持ちを落ち着かせ、ミカエルと面と向かった。
「お、やっと諦めてくれたのか?それとも、俺と戦うって言う無駄をするつもりか?」
「……俺とお前の力の差ぐらい、此処に居るだけで、分かる…。
だが、それだけじゃ分からない事もあるだろ…?」
その瞬間、ミカエルの笑みが一層濃く、憎たらしいものになった。
「くっくっ…強がりか?」
「いや、違うよ元大将…。
ミカエルと俺の違いは力だけじゃない…」
「………まさか…」
俺の意図に気付いたミカエルに、憎まれる様な笑顔を見せてやった。
「元参謀長をなめないで欲しい。
使える物、人…、神であろうと俺は駒として扱う」
そう言った瞬間、下から半透明の白い大蛇が、空を泳ぐように体をうねらせ、俺とミカエルの間に入り込んだ。
「まったく…我を駒扱いしおって…」
「申し訳ございません…うわばみ様」
「ちっ…土地神か…」
うわばみ様を通して、ミカエルの歪んだ顔がうっすらと見えた。
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