-12-[烽火]

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「あぁ、うわばみ様のお力を借り、桜香市全体に人払いの術式を張って貰った。 まぁ、その為に時間稼ぎをさせてもらったんだがな…」 「なるほど…、だから、必死こいてたわりには、窶れ顔じゃないのか…」  ため息混じりで、ミカエルがそう言うと、下を向いた。そして、少し疑問な趣で、また俺の方を向いた。 「だが、人払いの術式なんてデカイもん、陣に入っただけのわずかな時間だけで張るなんて馬鹿げた事、出来るわけがない」  確かにそうだ。人払いの術式は長くて一時間。それに市全体に張るんだから、その倍はかかる。実際にそうだった。 「……ふん…、こやつの術だ」  うわばみ様が気に食わなさそうに答えた。 「我どころか市全体に、我が張った陣を目では見えなくさせた…」 「十八番の幻影術か…。 そんな状態でよく、この蛇に発動させたな。お前の幻影術、一度掛かれば三日はその幻影しか見えなくなるはずだろ…?」  覚えてたか…。あの戦いでは最終局面でしか、使わなかったのにな…。 「あぁ、そうだ。だから、俺はうわばみ様に合図をした…。 あの陣はお前を閉じ込めるだけではなく…、うわばみ様に人払いの術式を発動して貰う為の烽火でもあったんだよ」
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