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なんでこうなったんだ…?
肘を支えにして、少しだけ起き上がった。
……周りを見ると、薬品や包帯…、そして開きっぱなしの一冊の本が机の上に置かれていた。
「あれを参考に…、応急手当をしてくれてたのか…」
ここからでは読めないが、多分医療の本だろう。
「………そんなことより…」
こいつを起こすとするか。
なにかと聞きたいことがあるし…。
「…起きなさい…」
肩を揺さぶり、声をかけた。
「…………」
すると薄目を開き、ゆっくりと起き上がった。
「………………」
そして、起き上がったまま、動かなくなった。
「………起きてるのか?…」
俺も起き上がろうかと思ったが、背中の痛みがひどく、思うように動かせなかった。
「…………?」
しばらくすると、何かスイッチでも入ったかの様に、きょろきょろとあたりを見渡しはじめた。
「…………!」
捜し物を見つけたのかベッドからゆっくりとおりた。
「……メガネか…」
下に落ちていたのだろう、上縁のないメガネをかけて、ベッドをのぞき込んだ。
「…………」
そして、[ペコ]っと頭を下げて挨拶。
「…あ、あぁ…、おはよう」
無口な奴だな。初めて会った時から、そう思っていた。
…キュキュッ…
…キュッキュッ…
「…ん?
なに、書いてんだ?」
いつの間にか持っていた、あのスケッチブックに、黒いマーカーペンで何かを書くと、俺の方に見せた。
『おはようございます。
お体の方はどうですか?』
「……えっと…まぁ、良い方です」
すごい不思議に思えた。まさか、ここまで口下手な人がいるんだな…。
キュッ…キュキュ…
キュキュ…キュッ…
一枚めくると、また書き始めた。
『それを聞いて安心しました。
倒れた時、「亡くなったのでは?」と少なからず思っていましたから…』
読み終わり、少女の顔を見上げた。…笑みを浮かべながらも、少しだけ泣いていた。
「そう…か…。すまない…」
そう言うと少女は恥ずかしそう手を振り、また書いた。
『いえいえ。
謝らないでくださいよ。
困った時は助け合うのが当たり前なのですから』
さっきまで半泣きしていた目がもう、嬉しくて溜まらないっと訴えるほどの笑みに変わっていた。
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