124人が本棚に入れています
本棚に追加
…ありがとう…
この言葉も随分言っていなかった…。
俺がそう言うと、木風は恥ずかしそうに照れ笑いをした。
…キュキュッキュ
『そう言えば、もうお昼ですね。
ご飯食べますか?』
まだ暗いから朝だと思っていたが、外が曇っていただけの様だ。
「あぁ、頂くよ」
頷き、そう言うと木風はすっと立ち上がった
そして、「少々お待ちくださいね」と言うように深くお辞儀し、部屋の外へと出て行った。
……バタン…
(さて…と…)
少しでも起きないとな…。治るものも治らなくなりそうだ…。
「よっ…と」
かけ声をかけ、両手で体を支えながらゆっくりと上半身を起こした。
…目覚めた時よりは体全身に響いていた痛みが和らいでいたからか、すんなりと起き上がることができた。
(よし…っと)
寝ている時は気づかなかったが、この部屋は以外にも狭く、ベッドだけで部屋の半分は使っている…。さらには、服やら本やらが、そこら中に散らばっていた。
(一人暮らしなのか?)
だが、見た目からしてまだ十五、六。高校に通っててもおかしくはない様に見える…。
(小柄なだけか…
若しくは中退か…?)
まぁ、今は気にしなくてもいいだろう。
キィィイ…バタン…
そう思っていると、木風がしょんぼりとした表情で戻ってきた。
「…ん?どうした?」
…キュキュ…キュッキュ…
なんとも悲しげな音をたてながら、文章を書き上げた。
『ごめんなさい…
お買い物、忘れてましたぁ…
もう残飯も残ってません(T_T)』
「いや、謝ることはない。
食材がなかったのは仕方がなかった事だし…」
キュキュキュ!
『そうです!
お食事に行きましょう!』
突然、はっとした表情をうかべ、すぐさま文章を見せた。
「…そう…、だな。
そうしようか」
断ろうと思ったが、歩くリハビリには丁度良いかもしれない…。
それに今は調子がいい。憶測だが、最後の天冥が治療を促進させてくれたのだろう…。
『では、少々お待ちください。
私は着替えてきますので』
そう書かれたスケッチブックを見せると、そそくさと部屋を後にした。
「……よっと…」
ベッドから両足をたらし、いつでも立ち上がれる様にした。
そして、あることに気付いた…。
最初のコメントを投稿しよう!