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バタン
そう思っていると、寝間着から私服に着替えてきた木風が部屋に入って着た。
片手に『無地とチェック柄と縞模様、どれがいいですか?』と書かれたスケッチブックを持ち、両腕には重そうにその服を吊していた。
どれも男物の服のようだ。
「あぁそれじゃ…そのYシャツ」
一番手前にあった深い赤と黒色のチェック柄のYシャツをとりあえず指さした。
すると、『では、これに似合う服を探してきますので少々お待ちください』とあらかじめ書かれた紙を見せるとまた部屋を出ていった。
……バタン…
(任せっきりだな…)
木風に全部任せている己に嫌気がさした。
少しは動かないとな…。
「…すぅ……はぁ……」
呼吸を整えた。
「よっ…こらしょ…」
両膝に手を添え、ゆっくりと立ち上がった。立ち眩みはするが、壁をつたっていけば、多少は歩けそうだ。
(外を歩くには…、杖が欲しいな…)
そう思いつつ、壁をつたいながらノブに手をかけた。
…ガチャ…
少し重たい扉を開けると、四人掛けの机と積まれた段ボール箱以外、なにもない寂しげなリビングが広がっていた。
(四人家族か…)
でも、おかしいよな…。
見知らぬ誰かを簡単に家に招き、連れてきた張本人に治療をすべて任せ、添い寝を許すなんてな…。
(木風がそうしたいって言ったのか?)
そう思うと俺は随分慕われてるんだな。
「……………!」
リビングをぼんやりと見ていたら、すぐ隣の部屋から出会った時と同じ服に着替えた木風が驚いた表情で出てきた。
「……俺が、立ち歩いてるのに驚いたのか?」
尋ねるとすぐさま頷いた。
「立ち上がれないと、外食に行けないだろ?」
そう言った途端、ポンと手を叩き今気付いたかの様な表情を浮かべた。
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