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「………こんなもんかな…」
着替えてみてわかったが、以外と派手な格好だ。
上での服装は必ず白と濃い青色の正装姿が基本だったからか、この黒中心の服装に、いささか抵抗がある…。
(時期に慣れるか…)
重い体を奮い立たせ、ゆっくりと扉まで歩いた。
コンッコンッ…
ドアの目の前に立った時だ。俺をせかすかの様なノックが響いた。
「今、行く」
俺はゆっくりと部屋を出た。
「待たせた」
リビングには出会った時と同じコートを羽織った木風がそわそわしながらこちらを見ていた。
「………………!」
「お、おい、どうした」
俺を見るなり突然、涙をぽろぽろと流し泣き出した。
(着方が変だったのか?
それともあまりの似合わなさに涙したのか?)
思い当たる事を片っ端に頭の中で巡らせていたら、木風がよれよれとした文字を書き始めた。
『ごめんなさい…
おとうさんによくにてたものだから…』
読みづらかったが、多分そう書いてあるはずだ。
「お父さん…?」
そう尋ねると、小さく頷いた。
「…そう…か…」
…木風はそれ以上、なにも書こうとはせず、ただ俯いたまま立ち尽くしてしまった。
「……………」
俺は頭を一掻きし、「ご飯食べに行くんだろ?」と言いながら、木風のしとやかな髪を撫でた。
…もう一度、木風は小さく頷いた。
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