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「どんな曲をやっているの」
鳥の唐揚げを食べながら、真理子が山之内に尋ねる。
「大学時代にやっていたオリジナルを、とりあえずやる事にした」
「オリジナルは、工藤さんが曲を付けたの」
「当然。作詩は俺だよ」
「あなたが、作詩ねぇ」
真理子は目の下をほんのり朱く染めている。
「こう見えても、文学青年だったんだよ」
山之内は、二本目の缶ビールの蓋を開ける。
「あなたの書いた歌は、聞いた事はなかったわね。聞かせてよ」
「今、ここで」
山之内の言葉に真理子は、黙って頷く。
山之内は、奥の部屋に行き、ギブソンハミングバードを取って来る。
チューニングを確かめて、山之内は歌い始める。
《今の君を》
君をこの海に連れて来て、若かった頃の話をした。
それは、青臭い恋の物語。
あの頃と呼べる程、大人に変わったんだろうか、今はただ、寄せては返す波を見つめながら。
★いつまでも、見つめたい、いつまでも、君だけを。★
黙って聞いている君は、夜の海を見つめてた。
僕は、君の横顔を見つめてる。
こうして突然に、昔話したのは、思い出が大切なだけ、今の君が大切だから。
今はもう涙で霞み、君の顔もよく見えない。
★繰り返し×2
「誰の事を歌ったのかな」
「内緒。そろそろ寝ようか」
山之内は、ギターをハードケースに仕舞いながら言う。
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