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「真理子の旦那さんが、またバンドを始めたんだ」
喫煙室で自販機の紙コップの珈琲を、飲みながら松島菜穂子は、煙草を吸っている。
「旦那が、バンドをやっていたのを、菜々子に話したっけ」
「まだ真理子が、旦那さんと付き合い始めた頃に聞いたよ」
「そうだったっけ」
山之内真理子は、短くなった薄荷煙草を灰皿に捨てる。
「旦那さんが大学の時、《チェリーボーイズ倶楽部》の工藤秀次郎と一緒に、バンドをしていたと話したよ」
「それが、また工藤さんと一緒。それに今回は、北原輝之さんも一緒だって」
真理子は、二本目の薄荷煙草に火を付ける。
「本格的じゃない。ライブをやる時は、見に行かないと」
菜穂子は、目を輝かせて言う。
「武蔵野小杉の駅前で路上ライブをやるって張り切っているわよ」
腕時計をちらっと見て真理子は、喫煙室を後にする。
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