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携帯電話のアラーム音で、山之内真理子は、起こされた。 鉛の様に重たい身体を、無理矢理動かし真理子は、ベットから出ると、背伸びをして首を回す。 「またすれ違いか」 リビングに行き、夫の義孝が、もう既に出勤した後なのを確かめて真理子は、独り言の様に呟きながら、珈琲を入れる。 平日休みの真理子と土日が休みの義孝は、ここ何年も一緒の時間を過ごした事がなかった。 真理子が、休みの日に、夫の義孝の帰宅を待って、晩餐の時間を持てる筈なのであるが、休日は休日で、何かと私用で真理子は、出掛けていた。 珈琲を飲み干した真理子は、シャワーを浴びて、出勤の支度をする。 「昨夜は、君も一緒で助かったよ」 部長の香川が、出勤した真理子に話し掛ける。 「お役に立てたか、心配です」 「先方は、君をえらく気に入ってて、これからは、君を窓口にしようと考えてるから、これからもよろしく頼むよ」 部長に頭を下げて真理子は、自分のデスクに行き、パソコンを立ち上げて、メールのチェックをする。 「今夜も、遅くなりそう」 真理子は、パソコンのキーボードを叩き始める。 「毎晩、遅くなって、旦那様、文句を言わない」 ランチパスタを食べながら、同期入社の寺島菜穂子が、真理子に尋ねる。 「夜は寝てるし、朝は、もう出勤しているから…。もう単なる同居人みたいな感じかな」 パスタを食べ終えた真理子は、薄荷煙草に火をつける。
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