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「単なる同居人って…。仕事が大事な時期なのは分かるけど、少しは、旦那さんの事も考えないと」 「うちのは、私の仕事を十分に理解してくれてますから」 真理子は、短くなった薄荷煙草を灰皿に揉み消す。 アパレルメーカーの営業の最前線で、肩肘張って仕事をしている真理子は、機械メーカーの事務畑一筋である、夫の山之内が、十分、自分の事を理解してくれていると思って、仕事に全力投球して来た。 「真理子夫婦の事だから、これ以上は言わないけど…。夫婦の会話は大事だよ。これは、失敗した私からの忠告」 菜穂子は、夫婦のすれ違いから、夫に他に女性が出来て、離婚をしていた。 真理子は、大きくため息を付くと、冷めた珈琲を飲み干した。 午後から、真理子は後輩の女子社員と一緒に都内にある、直営のショップを回る。 「先輩は、結婚をして家庭に入れと言う男性をどう思いますか」 渋谷のファッションビルの中にある直営ショップを出た後、休憩で入った珈琲店で後輩女子社員の篠崎真奈美が、真理子に尋ねる。 「私は、家庭に入れと言われた段階で、NGだな」 真理子は、薄荷煙草の煙を吐き出す。 「実は、ある男性からプロポーズされて、迷ってます。仕事も辞めたくないですから」 真奈美は、アイスカフェラテを一口飲む。 「彼氏ととことん話し合うんだね。下手に妥協をしたら、後で後悔するよ」 真理子は、短くなった薄荷煙草を揉み消す。
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