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翌日の8時過ぎ。山之内義孝と棚橋は、武蔵小杉駅前に来ていた。
大学の軽音楽部の後輩の工藤秀次郎が、やっている路上ライヴを見に来たのだった。
キーボードとギターの音色が聞こえる一画には、人だかりが出来ている。
「工藤は、相変わらず男前だな」
キーボードを弾きながらオリジナルを歌う、工藤秀次郎を見ながら、棚橋が山之内に言う。
「北原も顎髭を生やして弁護士には、見えないな」
山之内と棚橋は、工藤と北原の演奏に聞き惚れる。
「今度は、先輩達も楽器を持って来て下さいよ」
路上ライヴの後に工藤と北原に、声をかけた山之内と棚橋を、工藤はファミレスに誘う。
「俺達なんか、もう腕が鈍ってるよ。なあ、山之内」
「《チェリーボーイズ倶楽部》のメンバーのお前達が、何故、路上ライヴなんだ」
山之内の問い掛けに工藤は、路上ライヴを始めたいきさつを話し始める。
三年前、《チェリーボーイズ倶楽部》を再結成した時に、ひょんなきっかけで知り合った、留奈と言う歌手志望の娘の路上ライヴに、飛び入りしたのが、きっかけだった。
「音楽は、死ぬまで止められないか。俺もまたやりたくなった」
工藤の話を聞き終えて、山之内は興奮して言う。
「一緒にやりましょう」
北原輝之が、アイス珈琲を一口飲んで言う。
「ギターの山之内先輩とベースの棚橋先輩が、加わるとドラムが欲しいね」
工藤が、楽しそうにニコニコしながら言う。
「ドラムなら、神保に声をかけて見るか」
棚橋は、大学の軽音楽部で一緒だった男性の名前を言う。
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