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「明夜さんは……もういないじゃないですか。だから受け取ってください!事件を解決したとかじゃなくて私の気持ちなんです!」
「じゃあ……一応受け取ります。でも……
明夜さんに会ったら渡すってことで。それまでは預かっておきます」
「……はい……」
封筒を受け取ってしばらく沈黙が続いた。その沈黙の中、ジュンは雪が降っていないことに気付く。
もうすぐ春のようだ。
「水樹さんはこれからどうするんですか?」
「私ですか?私は……独裁バッドエンドに戻ろうと思います。実は私、独裁バッドエンドの創設者なんですよ。
ボーカルがちょうど空席だし、私も私のしたいことをして楽しく明るく生きたいなって」
「マジですか!じゃあまた有名になったら俺達の事、テレビで話してくださいよ!依頼者が殺到するかも……」
「ふふ、そうですね。考えておきますね」
水樹は心からの笑顔でそう言うと、屋敷を出る2人を見送った。きっと水樹はこの先うまくやっていくだろう。
別に何の根拠もないジュンの思い込みにすぎないがジュンはそう考えて雲一つないこの空のような晴れやかな気持ちで屋敷を後にした。
そしてこれでこの事件は無事解決して幕を閉じるのだがジュンはまだ気付いていなかった。
この事件に潜んでいた本当の“悪意”に。
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