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場面は都内の高級レストラン。この場所で背広を着こなしたいかにもエリート商社マンという雰囲気の男がノートパソコンのキーを叩いていた。
画面には丸い宝石が映っている。
男は少し長めではあるが綺麗に下ろしたやや茶色がかった清潔感のある髪のすき間からパソコンの画面をじっと見ていた。
そして男はレストランであることをまるで気にせずにパソコンに語りかけた。
「目標物は手に入ったか?」
パソコンの向こう側から息切れした男の声が返ってくる。
『は、はい……今、画像を送ります』
パソコンの画面には先ほどのものと“全く”……いや、“ほぼ”同じ宝石が映った。男も一瞬、同じモノかと思ったが違いはないか少し注意してみただけですぐそれが“目標物”ではないとわかった。
「……これは偽物のようだな。警察署に保管されていたもので間違いないか?」
『間違いありません。今、盗ってきたばかりですからね。……まさかハズレですか?』
「……そうみたいだ。悪いが元の場所に戻してきてくれ。こんなおもちゃを盗ってアシがついたのでは我々もゴミ同然だ。……奴らのようにね」
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