怪しい探偵事務所Ⅱ

第２話『追跡劇』ﾌﾟﾛﾛｰｸﾞ

「とにかく……あの男、神野 光とコンタクトを取るにはこの四人の中の誰かを使っておびき出すのが良いだろう。
しかし彼らが『帰ってきてくれ』と神野に言っても神野が日本に帰ってくる確率は１割にも満たない。
だからイヤでも帰らざるを得ないように神野の部下達に鳴き声を上げてもらう。親鳥に聞こえるような鳴き声をね」

「手配はすぐ済みます。しかしどのように致しますか？全員を襲うのはあまりよくないかと思いますが……」

「当たり前だ。襲われた小鳥は鳴き声を上げられない。親鳥を呼ぶのはその兄弟さ」

そう言ってパソコンの画面を見た男はそれぞれの顔を指でなぞったがその指はやがて一輝のところで止まった。

「狙うのは桐咲 一輝。できるだけ少人数で殺さないよう注意しろ。それから襲撃時、こちらの目的を桐咲 一輝にちゃんと伝えるんだ」

男は頭の中で組み上げたあらゆるケースを想定した絶対に失敗しない襲撃法を女に伝えて何も食べることなくレストランから出て行った。