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『もしもし!』
受話器を取った瞬間、やかましい女の声が響いた。驚いて受話器を耳から離してしまい最後まであまり聞こえなかったががどこか聞き覚えのある声だ。
「あ、はい……坂崎探偵……」
『あたし!早苗!ジュンくん久しぶり!』
電話の相手は早苗のようだ。懐かしさを感じたが、空腹のせいでいまいちテンションが上がらないため愛想の悪い声でジュンは返事をする。
「……早苗さん?ああ、久しぶりですね。
どうしたんですか急に?」
恐らくジュンのテンションの低さに気付いたのだろう。早苗はとてもご機嫌な様子の声に変わった。
『なになに、やけに冷たいね。もしかしてあたしのこと嫌いだったり……』
「いやいやいや!そういうんじゃなくてちょっと今、ブルーな気持ちなんですよ……金銭的に」
ジュンには早苗の次の行動が読めた。どうせ金がないって言ったら金を返せと言うに決まっている。それが早苗だ。
『あちゃあ。あ、でも前貸したお金は返してね』
まさに読み通りの反応を早苗がしたことで嬉しくなったジュンは小さくガッツポーズをした。
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